9. ウール天竺(Tシャツ)の開発検証とベースレイヤー再設計の記録

肌に最も近い衣服をウールで成立させると考えたとき、ボトムスだけでなく、トップスも同様に作る必要がありました。

その中でも最初に浮かんだのが、Tシャツとシャツです。
Tシャツは、伸縮性を持たせた編み方で作られる天竺と呼ばれる生地が一般的です。

これまで扱ってきた綾織の布帛とは異なり、用途も構造も全く別のものになります。

綾織のウール生地については毛織屋の方と進めていましたが、天竺のような編み地をウールで成立させるためには、別のアプローチが必要でした。

そうした中で、糸の段階から共同で開発に取り組んでくださる、日本に古くからある織物屋の方と出会う機会を得ました。

既存の生地を選ぶのではなく、どのような糸であれば、肌に近い場所で違和感なく使え、かつ日常的な使用や扱いに耐えうるか。

その前提から見直し、糸の設計から取り組むことになりました。

ウールという素材は、本来調湿性や抗菌性を持ちながらも、編み地にしたときには、その特性を十分に活かしきれない場合があります。

伸縮性を持たせることで着心地は良くなる一方で、耐久性や形状の安定性、使用後の変化など、いくつかの課題が生まれました。

それらを一つずつ確認しながら、肌に直接触れても違和感がなく、かつ日常使いに耐えうる天竺生地を目指して試作を重ねました。

こうして、既存の素材を選ぶのではなく、糸から設計することで、ウールの特性を活かしたTシャツの基盤は形になっていきました。

しかし、試作を重ねた結果、現時点では日常使用に耐えうる状態には至りませんでした。

着心地や機能性の一部は成立していたものの、耐久性や使用後の安定性において、納得できる基準には届いていません。

そのため、現時点ではこのTシャツは製品化していません。