5. ウールパンツとキャバリーツイルの設計・検証記録

一年を通して着られる衣服を考えたとき、最初に着手したのはパンツでした。

肌に近く、日常でも自然の中でも使用頻度が高く、条件が最も現れやすい衣服の一つだと考えたからです。

素材としてまず頭に浮かんだのは、デニムのような織物でした。

デニムは綾織によって作られる、厚く頑丈な生地であり、長く使う前提の衣服として非常に優れています。

一方で求めていたのは、その堅牢さを持ちながらも、もう少し軽く、日常の中で扱いやすく、環境を問わず使えるパンツでした。
ウールを使いそれらの条件を満たせないかと考え、軽さと耐久性を両立したパンツの制作に取り組みました。

加えて、都市でも自然でも不自由なく使えるよう、足上げの良さや動きやすさも重要な要素として捉えました。

形としては、デニムのテーパードシルエットを基にしながら、可動域を確保する構造を加えることから検討を始め、参考パターンを作り、その過程で、日本の袴、特に軍袴に見られる構造も参照しながら、動きやすさと着心地の楽さ、日常性を成り立たせる形を探っていきました。

毛織屋の方とのやり取りを重ねる中で辿り着いたのが、キャバリーツイルと呼ばれる綾織の生地です。


(画像はウールキャバリーツイルの生地片サンプル。左上が炭素1%混紡の黒生地、右上は炭素を混紡しないウール100%の白生地。手触りやその他比較テスト前。織り方と糸の太さが違うウール100パーセントの黒生地と白生地。この後大きな生地を毛織屋に織っていただき、試作を作り、比較、着用テストをしていきました。)


かつて軍装や乗馬服にも用いられてきた高密度に織られた地の目(緯糸と経糸が織られる生地表面の表情、質感)が急斜の綾織物は、軽さを保ちながら高い耐久性を持ち、日常と自然の双方で使用する素材として可能性がありました。

試作段階から成立の感触は比較的早く、各型ともに、商品化の一段階手前であるサンプルに至るまで、二度の調整と試験着用を経て、ほぼ成立する状態にありました。

同じ頃、他の記録にもあるように、防水透湿素材の検証で台湾の企業との会議があり、台湾に二度、それぞれ一週間ほど滞在しました。

滞在中、会合以外の時間は台北の街を昼も夜も歩き回り、九份の山間部のさらに上、山の頂上近くまで山歩きをしました。

汗をかいても呼吸するウールキャバリーツイルのパンツは乾きが早く、衣服内の湿度が滞留する感覚はほとんどなく、快適性が大きく損なわれることはありませんでした。また都市部に戻ると、真夏の台湾の屋内は冷房によって強く冷やされていましたが、汗冷えによる不快感もなく、同条件下で着用していたコットンのパンツと比較しても、体感として明確な差がありました。

帰国後も、長野などの山に囲まれた自然環境下に何度も足を運び、kemaやaka、icoの試作パンツを着用して山歩きを繰り返しました。
気温が氷点下に近い場面では、下着としてウールのタイツ等を重ねることで、そのまま着用領域を広げることも可能でした。

ある時は、南仏の山間部にある知人の家に滞在し、冬の期間を約二週間、ボトムはicoの試作のみで過ごしました。
そうした環境の中でも、日常生活から屋外での行動まで、このパンツを着用し問題なく過ごすことができました。

気温や環境が大きく異なる状況においても、着用感や機能面で大きな破綻が起きなかったことは、この生地と構造の有効性を確認する上での一つの指標となりました。

その後は、日常着としての馴染みやすさや、身体に負荷を掛けずに使えることを基準に、試着と修正を重ねながら最終的な形を導き出していきました。

こうして、デニムの耐久性、日本の袴の構造、そして日常と自然の両方で使える軽さと動きやすさを基盤としたパンツは、キャバリーツイルという生地を軸に、TARCHIの中でも早い段階で立ち上がってきました。

結果、この生地を用いたパンツはaka、kema、icoの三つのパンツパターンと、鹿革を部分使いした帽子、tsuba capとして展開されることになりました。

そして、このキャバリーツイルの検討と並行して、別の生地での検証も進めていました。