はじまり
過不足のない衣服は、生活を静かに支えます。
着るだけで楽になる服もあれば、気づかないうちに身体に負担が掛かる服もあります。
ここに語るのは、消耗を増やさず、どこでも過不足なく暮らすための衣服の在り方についてです。
私たちは日々、消費しています。
物だけでなく、情報や人そのものまで。
大切なものやその記憶さえも、何かに押し流されていくように感じることがあります。
自然の中で生活をしていると、気温や天候が刻々と変わっていくことを実感します。
一方、都市では同じ環境が保たれようとし、情報や消費の速度だけが加速していきます。
「モード」という言葉は“流行” に由来し、その“新しさ”を求める力が、文化を前に進めてきた側面もあります。
ただ同時に、その速さの中では、価値あるものが次の新しさに置き換わりやすくなり、 結果として、社会全体においても、流行や消費を前提にした設計や発信が増え、物や人の価値が“消費のサイクル” の中で測られてしまうことも少なくないと感じます。
日本では大量の服が廃棄され、まだ新しい服でさえ、短い時間で役目を終えることがあります。 そうした状況の中で、「エコ」や「サステナブル」という言葉が掲げられても、消費の速度や量そのものが見直される機会は、あまり多くありません。
それでも自然は、そうした人間の都合や考えに関係なく、力強く存在しています。
最近、不毛の土地と呼ばれたある国の砂漠が緑化したというニュースを目にしました。
人の手を借りずとも、自然は自らの力で循環し続けています。
その一方で、私たちは、自然のため、誰かのためという言葉を掲げて行動することがあります。
その言葉は、ときに自分の選択を引き受けきれないまま、体裁として使われているように感じることもあります。
人が何かや誰かのためになるのは、
自分のことを思い選んだ行動の中から、生まれてくるものなのかもしれません。
TARCHIは、「自然のために」とは言いません。
ただ、更新を煽らず、増やしすぎない作り方を選びます。
どこにいても馴染み、成立する衣服。
流行に合わせるのではなく、選択肢を増やさない自由。
大切なものを、なるべくひとつだけ。
“多さ” と“豊かさ” は同義ではないこと。
その実感を衣服という形にすることが、自然と共に生きることにつながると考えます。
消費をやめることはできなくても、その流れに飲み込まれない距離を、自分で選ぶことはできます。
飽きずに、共に歳を重ねられるもの。
自分にとって本当に価値のあるものを使いたい。
TARCHI は、そうした考えからはじまりました。
そして
Time / In situ — 時と、その場所。
Tarmac / Igneous — 都市の舗装路と、自然の岩道。
そのあいだに橋を架け、跨ぐ衣服。
「何を着るか」よりも、まず「何を減らし」、“大切なもの”とするか。
最小限で過不足なく暮らせる衣服を設計しています。
季節にも場所にも左右されず、機能し、長く続くこと。
それがわたしたちTARCHIの服づくりの原点です。
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素材の三系統について
TARCHI の衣服は、 大きく三つの素材系統
wool (羊毛) / leather (鹿革) / synthetics (合成素材)
で構成されています。
この三系統を軸に、 必要な箇所には他素材を “かすがい” として使い、 環境や行動の違いをまたいで暮らすための道具として設計しています。
羊毛は、 調温と耐久の知恵を持つ通年素材。
鹿革は、 水や火にも強く、 時間とともに身体に馴染む堅牢な素材。
xpore を中心とする合成素材は、防水・透湿・防風を兼ね備え、 安定して機能します。
それぞれの素材は補い合い、結果として 「衣替えに囚われず」 「季節に縛られない」
服づくりを可能にしています。
これら全ての素材は、少なく選び、 長く使う。
TARCHI の思想の核を体現するものです。
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衣服の三層概念
TARCHI は衣服を、 「内」 と 「外」 をつなぐ “生き方の構造” として捉え直しました。
Base Layer
身体に最も近い層。
湿度を整え、 身体を守る。
Mid Layer
身体と外気のあいだを調整する層。
日常と行動の両方を支える。
Shell Layer
環境と向き合う外側の層。
風・雨・温度変化を受け止める。
この三層は、同じ身体で過不足なく暮らし続けるための衣服の概念です。