2. 毛織屋との出会いとウール素材の特性理解の記録

ご縁なのか、TARCHIの計画が立ち上がって間もない段階で、羊毛加工を長く続けてきた毛織屋の方とお会いできる機会をいただきました。

これまで自身の体験から得ていたウールの印象は、においが出にくいこと、温度と湿度の調整等、断片的な理解に留まっていたように思います。

実際に話を伺う中で、ウールには天然の抗菌機能が備わっていること、紫外線への耐性があることなど、これまで感覚的に捉えていたことが、より具体的な特性として整理されていきました。

また、一般的には秋冬の素材として認識されることが多いウールですが、
毛織屋の業界では「10マンス」と呼ばれ、一年の大半で着用できる素材として扱われているという話を聞きました。

生地の厚みや加工によって、真夏の厳しい暑さを除いた期間であれば、同じ素材でも十分に対応できるという考え方です。

この話を聞いたとき、衣替えという習慣そのものに対して、改めて疑問を持つようになりました。

適切な保管と扱い、そして、その生地構造を作ることができれば、羊毛素材を長い間使い続けることができるのではないか。

そう考えるようになったことは、大きな転換点だったと思います。

ただし、そのためには私の中で一つの前提がありました。
日常的に使い続けることを前提に、洗いを含めた扱いに耐えうること、そして耐久性があることです。

一般的にウールは洗うと縮むという認識がありますが、その原因の一つは、繊維の流れが揃っていないことにあります。

毛の流れが分散した状態では、洗いによって繊維同士が絡まり、収縮が起きます。
また、その状態は皮膚への刺激にも繋がります。

一方で、繊維の流れを一定方向に揃えることで、収縮や刺激を抑えることが可能になるという話を伺いました。

こうした特性を踏まえ、加工や構造によってウールの可能性を最大限に引き出すことができるのであれば、TARCHIの根幹として扱う価値があると考えるようになりました。

何度も話を伺う時間を経て、一年を通して着ることの出来るウールの考えをお伝えすると、毛織屋の方から「一般的な常識を取り払い、一点を掘り続ければ出来ないことはないのかもしれません。」と、お言葉がありました。

この言葉が、その後衣服への取り組み方を決定づけることになります。