10. ウールデニム(非インディゴ)の検証と用途転換の設計記録
キャバリーツイルのパンツを検討していたのと並行して、別の生地での検証も行っていました。
それが、ウールデニム(非インディゴ)です。
毛織屋の方と、パンツに求める条件を整理していく中で、キャバリーツイルと並んで提案されたのがこの生地でした。
実際に、kema pantsはウールキャバリーツイルだけでなく、このウールデニムでも同時期に試作が進められていました。
素材としての完成度は高く、成立の可能性も十分に感じられるものでしたが、最終的にはパンツとしての採用は見送りました。
理由は、厚み、重さ、動きやすさ、そして日常と自然の双方で使う前提におけるバランスです。
軽さと耐久性、可動域の確保、さらに主張が決して強くはなく、品性を感じられる生地感(これはウールデニムにもありましたが)まで、全体のバランスにおいてパンツとしてはキャバリーツイルの方が適していると判断しました。
また、キャバリーツイルには炭素を含ませることができ、静電気の発生を抑える構造を組み込める点も優位性の一つでした。
一方で、ウールデニムは織機の制約上、同様の構造を組み込むことが難しいという特性がありました。
ただし、この素材自体の可能性は非常に高く、パンツ以外であれば成立するのではないかという感触が残りました。
そこで発想を転換し、ボトムスにはキャバリーツイル、トップスにはウールデニムを組み合わせる構成を考えるようになりました。
この組み合わせを検討する中で、自然と、学生服の構造が頭に浮かびました。
毛織屋の方からいただいた生地片に触れている中で、ウールの質感と構造が、いわゆる学ランの記憶と重なったためです。
学ランは軍服を起点とした衣服であり、その構造を辿ると、テーラードジャケットへと繋がっていきます。
この流れから、ウールデニムを用いたジャケットの構想が生まれました。
さらに、ヘンリー・デイヴィッド・ソローの像が頭に浮かび、自然の中での生活と、衣服の在り方についてのイメージが重なりました。
そこから、形骸化されたテーラードの構造を、現代の生活に合わせて再構成する方向へと思考が進んでいきました。
自然の中でも、都市でも成立すること、そして日本的なシルエットを内包した形として、ジャケットの設計が始まりました。
また、上下のバランスを整える中で、ベストという選択肢も自然に導かれました。
ウールデニムの質感はキャバリーツイルに近く、厚みと重さに違いはあるものの、組み合わせることで一つの構造として成立する可能性がありました。
この流れから生まれたのが、現在のkarami jacketと、oshie vestの前身となる構想です。
ウールデニムはパンツとしては採用されませんでしたが、別の衣服としての展開に繋がる素材となりました。